05,
2009

[夢破れて袋小路]
「この家じゃ、本当の話は十分と続かないんだ!」(本文より)
世界大戦が終結したアメリカで生まれた、サラリーマンの悲劇を描く戯曲。
文字通り、セールスマンが死ぬ話。
主人公のウィリーは、セールスマンだが、35年も勤めて利益をあげられない外回りをしている。ローンはたまっているし、息子どもは30代の働き盛りなのに、いまだに親のすねをかじっている。(現代的だ。あまりにも)
こんな悲惨な状況にあって、ウィリーは、自分はみんなに愛されるすばらしいセールスマンだと思い込む。そうではないことを知っているけれど、強烈な意思で思い込む。さらには、息子たちに過大な期待をかけて、英雄に仕立て上げて、いつかはすばらしい仕事を成し遂げると言い続ける
しかし現実は容赦がない。迫りくる現実の厳しさは、幻想では補いきれなくなって・・・。
これは一体どこの現代日本の話だ?と思うような、あまりにリアルすぎる会話にびっくりしてしまった。
自分のアメリカン・ドリームと、子供たちへのアメリカン・ドリームの継承。
この「アメリカン・ドリーム」を「プレジデント・ファミリー」と「俺だってやればできる中二病」と置き換えれば、今の日本の話として通じる。
そういえば、以前、『ライ麦畑でつかまえて』で引用した、「いったいいつになったら大人になるんだ?」というセリフが同じだったので、ちょっと驚いた。
「夢を見続けるのは子供のすることだ、現実を見ろ、そんなに甘くはないぞ」という、今も昔も変わらない警告。
成功した人はいい。夢を見ない人はいい。現実を知って方向修正できる人はいい。
そうできない人間はどうすれば?やはり行く末はこうなってしまうのだろうか・・・考える。
ミラーと同時代の劇作家には、テネシー・ウィリアムズがいる。ちなみにどちらもピュリツァー賞を受賞。同時代に優れた劇作家が二人も出て、しかも二人とも、夢が壊れる世界を描いているのは、示唆的だ。『ガラスの動物園』の方が叙情的には美しいが、インパクトはこちらかな。
Arthur Miller Death of a Salesman , 1949.
アーサー・ミラー:倉橋健訳『セールスマンの死』早川書房、2006年。
recommend:
崩れるアメリカ。
>テネシー・ウィリアムズ『ガラスの動物園』・・・もろい世界の崩壊。
>フェツジェラルド『グレート・ギャツビー』・・・グッバイ、アメリカン・ドリーム。
rate:☆☆☆☆




ふくろう男

















