20,
2008

[渦の真ん中に立つ]
イタリアの作家、タブッキの代表作。
「供述によると、ペレイラは・・・」という書き出しが印象的な作品。
彼はイタリア生まれだが、ポルトガルをこよなく愛した。
本作も、舞台は1938年のファシズムの影が忍び寄るリスボン。
夕刊紙の文芸欄を担当している記者ペレイラが、助手に雇った青年にまつわる、政治的な厄介ごとに巻き込まれる話。
たとえば、言論弾圧下にある言論家には、大別すればだいたい次のようなものになると思う。
言論弾圧を苦々しく思いながらもそれに服従する(せざるをえない)人と、あまり考えずにその中で生きている人、そして数少ないながら、言論弾圧に真っ向から立ち向かう人。
主人公はあきらかに、あまり考えていない人だった。
政治の話はカフェの給仕に聞く始末、それについて意見を言われても「僕の仕事は文芸だから」と一蹴してしまうような。
その彼がなぜ、反政府運動に巻き込まれることになったのか。
小説の大筋はここにあるが、自分が意識、理解する前に、すでに道を歩き始めることもあるという、人生の不可思議さがここでは語られている。
うだるような暑さと砂糖一杯のレモネードと、ペレイラの奇妙なまでの静かさが対比しておもしろい。
巻き込まれているという実感は、渦のど真ん中にきた時にやってくる。
振り返ってみれば、確かにそこに兆候はあった。
静かにあつい空気が、感じ取れる一冊。
...Antonio Tabucchi SOSRIENE PEREIRA. UNA TERTMONIANZA , 1994.
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タブッキはどこか幻想的な作風を持つが、この物語はどちらかといえば、ファシズムや社会主義に立ち向かう姿勢が描かれる。
タブッキの中でも異色作。
recommend:
>クッツェー『夷狄を待ちながら』 (気がつけば巻き込まれている話。こっちはもっとえぐい)
>フェルナンド・ペソア『ポルトガルの海』 (タブッキが愛する作家の作品)
rate:☆☆☆




ふくろう男

