17,
2008

[世界文学と日本人]
海外文学読みにとって、池澤夏樹はなじみの深い日本人作家であると思う。
「考える人」でも特集が組まれていたし、河出書房からも池澤夏樹個人編集の「世界文学全集」が着々と刊行されている。
いつかどこかで、必ずお目にかかるお人。
あとがきなどで彼の名を見ると、「やあ、なっちゃん」と思わず口に出してしまったり。
本書は、1980年代から1990年代にかけて、著者が書いたコラムをまとめたもの。
世紀末のことなんか書かれていたりして、今見るとけっこうおもしろい。
文学について、都市について、アメリカについて。
テーマはフレキシブル、その中にドッグイヤーのように文学の話がはさまれるような本。
「ぼくはずいぶん長い間、世界文学というものの信仰者だったように思う」とあとがきは語る。
彼の海外文学ジャンキーぷりは有名で、本書を読んでいてもそれはよく分かる。
マルケス、ピンチョンあたりは、今でこそ翻訳書が出ているが、昔はそんなものはなく、だいたいを原書か英語訳で読んでいたようだ。
そう思うと、今の私たちは本当に恵まれている。
海外文学のコア読者は、日本全国で3000人と言われている。(30万でも3万でもなく3千!)
こんな辺境言語、少数読者で、これだけ地道に翻訳が出ているのはめずらしいことだし、ありがたい限り。
一方で、海外文学がもっと注目されればいいのになあとも思う。
とはいえ、本当は本は原書で読みたいところ。(英語以外は生まれ変わらない限り無理だとは思うが)
この「少しでも多くの物語を読むぞ」衝動がおさまったら、いつか。いつか…
...池澤夏樹『ブッキッシュな世界像』白水社、1999年。
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池澤夏樹の世界文学好きが嵩じてできた作品が、『マシアス・ギリの失脚』 (新潮社、1996年)。
ラテンアメリカ文学をもじった、和製・世界のしかけの話。
マルケスとかを読んだあとだと、どうしても見劣りはするが、「日本文学」ではなく、「世界の中の日本文学」をめざそうとした氏の心はよかったのでは。
個人的には、池澤夏樹の小説で好きなのは、やっぱり処女作『スティル・ライフ』。
趣味で写真をやっているものだから、スライドをまわすシーンは染みました。
recommend:
>池澤夏樹 『海図と航海日誌』 (こちらも書評群)
>長田弘 『私の二十世紀書店』 (詩人と文学)
>柴田元幸 『生半可な学者』 (エッセイのようななにか)
rate:☆☆☆




ふくろう男


私の最近のツボは、河出の文学全集をたちあげる際のコメント、
『「世界文学全集」というのは普通は読むものだ。あるいは読まないでも本棚に並べておくものだ。自分で作るものではないよ。』でした。
確かに、周囲にもネットにも海外文学読者は少ないですね。
書いていれば、いずれ趣味の合う人に会えるだろうと楽観的予測でブログを始めたのですが、私は運がよかったようで、なによりです。
ほとんど知り合いのような感覚ですよね。
すべて読んだわけではないけれど、池澤さんの書いた小説より、翻訳作品の解説やエッセイの方が好きだったりします。
それにしても、3000人ですか。
ネットをみていても、海外文学のレビューを書いているサイトって少ないですね。
なので、ふくろう男さんのブログ、貴重です。