『かもめのジョナサン』リチャード・バック
かもめのジョナサン


[誰よりも速く]

「われわれ一羽一羽が、まさしく偉大なカモメの思想であり、自由という無限の思想なのだ」(本文より)


風が気持ちいいい晴れの日には、ふらりと海に足を運びたくなる。
海の上をカモメが飛んでいる。そんな時に、思い出す本がある。


本書は、哲学とダンディズムを心に抱くカモメの話。
お金のない大学入学したての頃、学校の購買で立ち読みした思い出の一冊である。
なんだかあまりに変な本なので、翌日にけっきょく購入してしまった。

ほかのカモメとは違うということをはっきりと自覚しつつ、自分の限界に挑戦するカモメのジョナサン。
他者とずれていてもかまわずに、自分の道を行き、自由と誇りを求めるその姿に、世界中の若者が焦がれたらしい。

思うに、この本がベストセラーになったのは、なんだかんだとジョナサンがカリスマ的存在になり、他者から認められたからではないだろうか。
ようするに、ヒーローなんだと思う。
孤高の存在のまま、誰にも知られることなく限界を越えて、人知れず消えていく話だったら、たぶんここまで売れなかったような。
私のようなひねくれ者は、彼の英雄的姿には、特に心揺さぶられるわけでもなく。


でもだからといって、この本が嫌いなわけでもない。
Part3は微妙だったが、Part2までは少年漫画のようなおもしろさがある。
心同士で対話したり、「おれは完全なカモメ、無限の可能性をもったカモメとしてここにある!」と叫んだり、時間や空間を飛び越えたり。
特にジョナサンとサリヴァンの友情は必見である。

天国のようなところにきて修行にはげむジョナサンが、地上にかえると言ったとき、さみしくなるな、と言ったサリヴァンに、ジョナサンが「馬鹿なことをいうな!」と言う。


「…空間を克服したあかるきには、われわれにとって残るのは「ここ」だけだ。そしてもし時間を征服したとすれば、われわれの前にあるのは「いま」だけだ。そうなれば、この「ここ」と「いま」との間で、お互いに一度や二度ぐらいは顔をあわせることもできるだろう?そうは思わないか、え?」
サリヴァンは、思わず笑い出した。
「この気ちがいめ」彼は親しみをこめてそう言った。(本文より)


ここまで熱いカモメがいるとは!

あまりまじめには受け取りたくない作品かなと。
日常を生きる者を上から目線で見て、日常から脱し、他者を啓蒙してやろう的な目線にけちをつければきりがない。
だから笑って、楽しんで読む。


...Richard Bach JONATHAN LIVINGSTON SEAGULL , 1970.
 リチャード・バック/五木寛之訳 『かもめのジョナサン』 新潮社、1974年。
 


recommend:
>サンテグジュペリ『夜間飛行』 (飛ぶ男の浪漫)
>ヘミングウェイ『老人と海』 (自然との戦い)
>ジブリスタジオ『紅の豚』 (飛べない豚はただの豚)
rate:☆☆
ふくろう男
北米文学
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