『ライ麦畑でつかかまえて』J.D.サリンジャー
ライ麦畑でつかまえて 

[ぼくは行かなきゃならない]


「相変わらずのコールフィールドだ。いったい、いつになったら大人になるんだ?」(本文より)

アメリカの「永遠の青春小説」。
1950年代に書かれて、今なお読まれている作品。

本書の主人公、ホールデン・コールフィールドは、友人や先生、学校、女の子、まわりにいるあらゆる人々にたいして、ホールデンは何かにつけて一言物申す。
「どうしようもない」だとか「だらしない」とか「がまんできない」だとか。
もちろん、同じくらい、自分のことも言う。
「弱い」「勉強が出来ない」「狂っている」などなど。…
実際彼はそのとおりで、「文武両道、かっこういいヒーロー」とは、まさに対極に位置している。

半分くらいいくころには、文句ばかりでだんだん読むのがうんざりしてきた。
何がいいのか、この本は?まじめに問いかけたりもした。
だけど、残り三分の一くらいのところ、唯一ホールデンが悪く言わない妹フィービーとの会話あたりで、「ああそうか」と納得する。

本書の題名ともなる、ホールデンの世界について、他者について考えていること。
なるほど、彼は確かに周りに悪態はつくが、だからといって、他者のことを本当に嫌っているわけではない。
欺瞞、偽善、うそくささ、そういったものへのこの反発。
「いんちきくさい」ものへの反発はむしろ、曲がったことをなあなあにできない純粋さからか。
そう思えると、一気にホールデンへの目線がやさしくなる。

なんといっても、妹フィービーが妙にかわいいので、彼女の存在だけで、一読の価値はある。
「ねえホールデン、友達にげっぷのやり方を教わったの。聞いてくれる?」

規律による単純さを嫌い、無駄や脱線を愛する。
さて、どんな大人になりたいか?

"If a body catch a body coming through the RYE..."


...J.D.Salinger The Catcher in the Rye ,1951.
 J.D.サリンジャー/ 野崎孝訳 『ライ麦畑でつかまえて』白水社、1984


recommend:
スコット・フェツジラルド『グレート・ギャツビー』 
>ジャック・ケルアック『路上』 (アメリカの青春物語)
rate:☆☆☆

キャッチャー・イン・ザ・ライ

村上春樹訳。


上梓当時、ホールデン・コールフィールドのぶっちゃけた若者語が、新鮮だったらしい。
そのせいか、訳問題でいろいろもめる作品でもある。
野崎訳はそのブロークンな口調の雰囲気を、うまく出そうと試みているが、いかんせん言葉が古い。
村上訳は現代っぽいが、村上氏の口調が前面に出ていて、こちらはこちらで論争の的になっている。
両方通読してみて、どちらかといえば、「ライ麦」ぽいのは野崎訳かな、と。
ホールデンの「I'm crazy」気質は、村上氏だとどこかすかした感じで、彼の持ち味をうまくいかしきれないように思う。
ふくろう男
北米文学
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