『ダロウェイ夫人』ヴァージニア・ウルフ
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[たった一日]

イギリスの女性作家による、6月のロンドンの、たった一日の物語。
著者ウルフは、イギリスのロンドンの文学一家に生まれた、お嬢様タイプの作家。
そのへんの境遇は、本書の主人公であるダロウェイ夫人に似ているけれど、ほがらかなダロウェイ夫人とちがい、ウルフは生涯、神経的発作に悩まされ続けた。

本国イギリスでは、「夜眠れない?ならばヴァージニア・ウルフを読みなさい」なんていうユーモアが通るくらい、難解な作家とされる。
実験的な手法が多いせいかもしれない。
ちなみに本書は、「意識の流れ」の手法によって書かれている。

時は1923年6月のある日、場所は第一次世界大戦の終わったロンドン。
6月は、鬱屈とした天気の多いロンドンの中で、もっとも美しい時期と言われている。
お茶会を開くクラリッサの心の流れと、戦争の傷を負った青年の心の流れが、ゆるやかにロンドンを流れて、最後はその記憶が触れ合って終わる。
劇的ななにかがあるわけでない。
しかも、話を進める主体が、なんの前触れもなく突然入れ替わるので、この流れに慣れるまでに、けっこう時間がかかった。

本書には、いわゆる「客観描写」というものは存在しない。(そもそも世界を"客観的"に語ることはできない)
まるでバトンを手渡していくように、意識の主体はさまざまな人に流れ、現在も過去もないまぜになって、徹底的に主観で語られる。
神の目線の排除、「意識の流れ」の手法。
名前は聞いたことはあったが、実際に読んだのは本書がはじめてだった。(ジョイスやプルーストは積読の中に埋もれたまま)
空間的な「時間」と、意識の中の「時間」は、必ずしも一致しない。
そんな当たり前だけど、つい見過ごしがちなことを、小説の形で指し示される。

色とりどりの糸が、交互にかさなって、一枚のタペストリーを作るような構成。
はじめは何のことだか分からないのだが、読み進めていくうちに、模様がだんだん見えてくる。
思いもよらないところでつながって、ひとつの流れに集約されていくのがおもしろい。
やや読みにくい印象を受けるが、慣れればゆったりとした流れを堪能できる。

個人的に、ピーター・ウォルシュのキャラクターがいい。
なんだかんだと文句や理論を述べながら、クラリッサに恋をしている姿が好ましい。

人間や世界を、外側からではなく、内側からのぞいてみるおもしろさ。
意識と心だけでできた世界に、ゆらり、流れてみる。


...Virginia Woolf MRS.DALLOWAY , 1925.
 ヴァージニア・ウルフ/丹治愛訳 『ダロウェイ夫人』 集英社、2007年。

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なんとなく、個人的にハードルが高いように思われた「意識の流れ」手法の作品だが、本書ならとっかかりとしてはいいかもしれない。
大御所は、いつか読もう、そうしよう。

recommend:
>マルセル・プルースト『失われた時をもとめて』 (抄訳版がおすすめ)
>ディケンズ『二都物語』 (ふたつから、ひとつへ)
>ジェイムズ・ジョイス『ユリシーズ』 (あまりに長く長く長いが)
rate:☆☆☆
ふくろう男
イギリス文学
4 0

comment
コメントありがとうございます
こんにちは、とびらさん。
はじめまして。コメントありがとうございます。

「波」もいいですね。
題名がぴったりの作品だと思います。

私は、ほかにウルフでは短篇「壁のしみ」がお気に入りです。
流れつつ、まとめるところはきっちりまとめてくる彼女らしさがいいですよね。
2008/09/06 09:35 | | edit posted by ふくろう男
はじめまして
はじめまして。
私はバージニアウルフ大好きです。
「波」もとても面白いですよ!
もしよかったら読んでみてくださいね。
これからも遊びにきますねv-39
2008/09/05 18:28 | | edit posted by とびら
こんにちは、Andreさん。

私も、プルーストとジョイスに何度もトライ、挫折を繰り返しております。
うまく波に乗れればおもしろいと思うんだけれど、うーむ難しい。

場面の描写がしっかりしている作品は、そういう楽しみもありますね。
「ボヴァリー夫人」とか、まんまらしいですよ。
ロンドン、行ってみたいです。
2008/08/23 11:08 | | edit posted by ふくろう男
こんにちは。

「意識の流れ」、自分もフォクナーの「響と怒り」に何度もトライするも挫折続きだったのですが、「ダロウェイ夫人」はちゃんと最後まで読めました。

この本を片手に、登場人物たちの視点を感じながらロンドンを散歩したら面白そうだなぁなんて思ってます。
2008/08/22 00:39 | | edit posted by ANDRE
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